羊をめぐるブログ

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桜庭一樹さんの「私の男」を読んだ

桜庭一樹さんの「私の男」を読んだので印象と感想を書きます.

 

概要

「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」,「GOSICK」などのライトノベルで人気を博した桜庭一樹さんが一般小説においてもすごいことを示す直木賞受賞作です.影のある親子の壊れた生活を振り返っていく話です.

なぜ読んだか

桜庭一樹さんのことは,少しでもサブカル系に足を踏み込んでる人なら誰でも聞いたことはある「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」で知っていました.

その後,表紙がかわいい「GOSICK」を買いに行ったところ,コーナーにこの本が置いてあり,一般文芸でも描いてて直木賞まで取ってるんだ〜,読んでみよう.と思って同時に購入しました. 買ったのは4年前ぐらいなのですが,積ん読整理の過程で目についたので読み始めました.

最初の印象

「私の男」というタイトルから,ダメな夫に振り回されつつも世話を焼いてしまう妻の日常を書いたオムニバス小説と想像していました.表紙の目が虚と花で覆われて倒れ込んでいる人間は,共依存を続けることで同化し,枯れてしまった姿なのかなぁなど.

内容の感想

まさかここまでハードな内容だとは思いませんでした.あっさりとした表紙とタイトルの字体からは想像できなかったです.

結婚という一般的な人生最大の幸せを迎えているにも関わらず,心は別にあるような主人公.突然消えるように死んだ妖しい義父.苦労話が始まるのかと思ったら,実際はもっと恐ろしくて,壊れた親子生活が振り返られます.最後まで読み終わった後に,安定した人間との結婚式を迎えた主人公の気持ちを察すると,とても恐ろしいです.あれだけ人間として破滅した日常を送っていたのに,今更普通に幸せな生活をしていけるのかと.父親が死んだ今,誰にも言うことができないし,逃げることもできない.戻りたくても戻れない.父親は主人公を歪ませ,地獄を歩ませるために生きていたのかと思えるほどです.

現実的かどうかはわかりませんが,生々しく人間が書かれた小説を読むのは久しぶりでした.田舎の閉塞感や,それをけがらわしく見る主人公の視点の描写が生々しかったです.いろんな小説を読むようにしたいきたいです.