羊をめぐるブログ

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重松清さんの「流星ワゴン」を読んだ

重松清さんの「流星ワゴン」を読んだので感想を書きます.

概要

ドラマ化もされた重松清さんの代表作だと思われます.家庭や仕事,全てが崩れかけになり自殺を考えていた主人公の前に過去へと向かうワゴンが現れるという内容です.ビタミンFに代表される,家族の現実,温かみなどを感じさせてくれる小説でした.いつもは心をどん底に落としてくるようなものを読んでいますが,たまにはこういうものもいいです.3週間ぐらいかけてちびちびと読みました.

なぜ読んだか

いつも読む小説の多くは突出した悲劇が書かれていました.そういうものは自分の心をどん底に突き落としてくれますが,やはり自分の生活とはかけ離れているので,日々の行動にポジティブな影響を与えるかというとなんとも言えません.最近,生きるうえで起こる悩みをどう捉えるか,どう捉えていくかについて考えていて,その中で,自分が社会を生きていく中で遭遇するような悩みをちゃんと受け止められるかというのが気になりました.流星ワゴンで書かれているのはまさに血の通った悩みの数々であり,そういうものを体験してみたかったのが大きな理由かもしれません.あと,流星の絆を読んでみようと思って探してたらこれを見つけたというのもあります.

最初の印象

私はファンタジーとかがあまり好きなタイプの人間ではないので,タイムスリップと書かれているあらすじを読んで,うーん,これはちゃんと生々しい部分を感じれるようなもんなのかなぁ〜,魔法でごまかしたりしないかなぁと思っていました.よくわからない超常現象に人間の心がグラグラ動かされるというのは,感情移入がしにくいです.この小説はそことは反対だったので,とてもよかったです.

内容の感想

人間関係における不器用で伝わりきらない部分,でもそこを生きてるからこそ感じられる希望みたいなのを自分も体験できたような気がします.人間どうしようもない部分がたくさんあって,それで人とすれ違ったりもするけど,ちゃんと繋がってる部分はあるよと教えてくれるようでした.タイムスリップというファンタジーな要素も,周りの人間の不器用さの裏側の思いを知るための舞台装置としてうってつけなように思えました.本人にしかわからない葛藤を考えず,表面に出てくる結果だけを見てしまうよくないコミュニケーションが発生することは多々ありそうです.そこを広く受け止められる心を持って,また,他人の裏の温かみを見落とさないように生きていこうと思います.ドラマは最後ファンタジーパワーで全部解決するらしいですが,やっぱどうにもならない日常に希望を見出して生きてくというほうが,私は好きです.