羊をめぐるブログ

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西加奈子さんの「サラバ!」を読んだ

西加奈子さんの「サラバ!」を読んだので感想を書きます.

概要

西加奈子さんの直木賞受賞作です.出たのはもう4,5年前ですが,今でもよく本屋で見かけるので,そういうことだと思います. そういうことなので私は徹夜で読んでしまいました.

なぜ読んだか

数年前,塾でバイトをしていた時に,本好きの生徒さんがいて,おすすめとして紹介してもらいました. 私は普段,流行に乗っているようなものを読むことはほとんどないのですが,その勧めてくれた人とはいろんな趣味が あって,また人間的にもすごく立派な方で,尊敬していたので,その人の一押しなら間違いないと思いました. 残念なことに,これを勧めてもらった時の私はお金のためにバイトを詰め込んでいて,精神的余裕がありませんでした. 結局バイトを辞めて地元を出るまで,これに手をつけることはなかったのですが,それから数年が経ち,読み終わった今,すごく後悔しています.

最初の印象

父親の事情で海外移住を繰り返す主人公が,エジプトで大切な友達と出会う...

裏に書かれたあらすじを見た時,私はこの小説のテーマが私の精神と対局にあるように思えました. 家に引きこもって一人で楽しんでいるような人間が,見知らぬ土地で言葉も通じぬ人間と心を通わす などという事象に同調するのは非常に難しいのです.同調するような心が自分にあることを認めたくはないのです. 私にはない幸せな心の交流を燦々と見せつけられ,うんざりしそうだなとか思っていました.

内容の感想

とても予想を裏切られました.だいたい裏切られます.幸せな黄色で埋め尽くされていると思っていた小説内の空気は, 実はその多くがどんよりとしたもので覆われていました.汚い環境,不穏な家庭,格差,嫉妬とプライド, 後悔,そういった暗いものが常につきまとっていました.私が人生で感じた,どうしようもないネガティブな 感情というものが多く表れており,最高に同調しました. しかし,そういうものに心を魅了されたから こういうのを書いているわけではありません.私が,すごいとなったのは,そんな暗い空気の中を優しく,力強く 生きている主人公の周りの人間たちです.読んでいる時,私は,自分が生きているのが恥ずかしくなりました. 立場,能力,目標そんな自分ごとにばかり目を取られ,己のダメさばかり呪っていた自身が,周りの人間にいかに恵まれていたか, そしていかに多くのものを切り捨ててきたかを分かった気がします.

人間関係を軽視していた私が,もっと人と,心から温かく交流していきたいなぁと思える小説でした. 勧めてくれた人と会って話したいです.